2022年4月7日木曜日

事実を連ねよ。志望理由書や小論文を書くときのピラミッド原則。

この記事は、推薦・総合型選抜入試で書く志望理由書、小論文の構成を塾でどう指導するか書いています。

「君もそう思うだろう?」

Q:数学係の行動からあなたが類推することは何でしょう?
  • 昼休み。1組の数学係が訂正ノートの束を抱えていた。
  • 2組3組の数学係も訂正ノートの束を抱えていた。
A:あれっ、今日は数学の訂正ノートの提出日だったけ?!

「君がそう思うのは当然だ」と誰かが納得するのであれば、点検日であろうとなかろうといいのだ。志望理由書も同じだ。

「君が本校を志望するのは、当然だね」

と入試選抜者を納得させればよい話。そのためには、

「事実」をつらねよ!

「思い」ではダメだ。

指導例

志望理由書の原稿

マーチングが好きだ!
「明日コンテスト、今日は最終リハーサル」という日も、終わってから塾で勉強するUさん。

Uさんは高3の秋、熊本大工学部機械科の推薦入試で志望理由書を次のようにまとめた。

私の高校生活はマーチングに没頭した3年間だった。マーチングの魅力は皆の演奏と動きが見事に一致したときの達成感だ。県代表として九州大会に4回出場し高2から部長として100人あまりの部員をまとめてきた。

機械システム工学科を志望するのは、将来車の設計を仕事にしたいからだ。マツダRX-7FD3S型ロータリーエンジンの排気音を初めて聞いた時のゾクゾク感を忘れない。このときから「将来は車をつくってみたい」と思うようになった。
車は外観・加速感・排気音などあらゆるものが設計・調整されている。2万点もの部品が精密に組み上げられている。それはマーチングも同じだ。一人一人が奏でる音と動きと綿密に組み上げている。こんな共通点も私が車の設計にひかれる理由だ。


参考:「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」

「事実」を構造化する手順。

  1. 志望理由・プロフィールを伝えるメッセージをふせん紙に項目化。
  2. メッセージを論理的にグループ化し段落を作る。
  3. 段落のメッセージは下位グループの要約である。
  4. フォーマットに基づき、そのメッセージを文章を作成する。

1.志望理由・プロフィールを伝えるメッセージをふせん紙に項目化。

1. メッセージをふせん化

ふせん紙に書き出す例は「メモの魔力」自分を知るための【自己分析1000問】から抜粋した。
私の過去。幼児~小学校6年
  • 子どもの頃にどんな家族の中で育ったか
  • 子どもの頃はどんな子だったか
  • 子どもの頃の最も重大な出来事は何か?
  • 子どもの頃、楽しかったことは何か?
  • 子どもの頃、苦労したことは何か?
私の現在。中高時代
  • どんな部活動をしていたか?
  • 生徒会活動やボランティア活動を経験したか?
  • 中学や高校で、どんな友人や先生に出会いましたか?
  • 一番得意な教科は? 好きな教科は? どんなふうに、なぜ、得意?好き?
  • どんな事に価値を見いだしてきましたか?
  • 長所と短所を説明してください。
  • 特技や趣味を説明してください。
  • 進路を考えるとき、どんな方向へ進みたいと思いますか?
私の未来。
  • 何を学びたいですか?
  • これからやってみたいことは何ですか?
  • どんな勉強や研究をしてみたいですか?
  • 将来どんな職業に就きたいですか?
  • これからどんな生き方をしたいですか?
  • どんな生き方に憧れますか?
A.きみの本気度をチェック
  • その学問・分野を学びたいと思ったきっかけは何ですか?
  • その学問・分野についてどんなアクションを起こしたことがありますか?
  • なぜ、その大学・学部・学科でなければならないのか?
  • 具体的に興味・関心があるものはどういうことですか?
  • きみの志望がその大学・学部・学科に合致している理由を説明してください。
B.きみの壁をチェック
  • きみはどのようなことに取り組んできましたか?
  • なぜ、そのことに取り組みましたか?
  • 活動する中で経験した壁(困難・課題)はなんでしたか?
  • 壁をどうやって乗り越えましたか?そのプロセスはどんなでしたか?
  • 壁を乗り越えるプロセスで気づいたこと、学んだことは何でしたか?
  • うまくいかなかったことがあれば、その理由はなんでしたか?
  • うまくいかなかったことについて、どうしたら解決すると思いますか?
C.きみのキャリアビジョンをチェック
  • 大学卒業後に何をしたいですか?
  • 大学卒業後にどうなりたいですか?
  • 具体的な進学や就職のイメージがありますか?

2.メッセージを論理的にグループ化し段落を作る。

伝えるメッセージをふせん紙に書き出す。ふせんを論理的に構造化する。それをグループ化し段落を作る。上の段落は下の段落の要約である。Uさんの志望理由の場合、次のようなピラミッド構造だ。

最初に自己紹介で伏線(ふくせん)を張るのは、あとに続く段落を読んだ時、「君がそう思う(行動する)のはもっともだ」と思わせるため。ほのめかしておく。

マーチングに没頭、皆の演奏と動きが見事に一致したときの達成感、九州大会4回出場の実績、100人余をまとめたリーダーシップの伏線は、排気音を初めて聞いた時のゾクゾク感、車づくりとマーチングの共通点に気づくUさんの繊細さや情熱の表れだ。段落を読み進めるごとに、「君が機械科を志望するのは当然だ」と入試選抜者は納得したのではないか。上の段落は下の段落の要約だから、相手を納得させるまでその答えは準備済みだ。

メッセージをグループ化
構造は常に同じ

3.段落のメッセージは下位グループの要約である。

3. 段落のメッセージは下位グループの要約だ。

4.フォーマットに基づき、そのメッセージを文章を作成する。

4. メッセージを文章化、推敲。




参考

  • エッセイ 夢はすぐそばにある。

    Uさんは熊本大学工学部機械工学科に見事合格、進学した。優秀な成績で卒業してマツダへエンジニアとして就職。

  • AO・推薦入試で自分をどう知ってもらうか。

    志望動機では、君はこんな人間だという君の肖像が浮かび上がって来なくてはならない。そのためには何を書けばいいのか?ハーバード大では、これまでに達成したこと、直面した挫折とそこからどう立ち直ったかをエッセイに求める。「ノウハウで実現するレベルではない力」がそこから浮かび上がってくる。

  • 作文の技術

    文章の書き方を書いています。小学生にもこれを使ってよく注意することがあり役に立っています。



あとがき

Uさんの志望理由書はすべて事実で構成されています。思いは事実の結晶です。事実が言える人の思いは、自然と伝わります。