アンダークラス2030
- 大学の新規学卒者の2,3割が非正規労働者として働かざるを得なくなっている。
- 10年後の2030年には、従来の労働者階級とは異質な下層階級「アンダークラス」(参考②)が、若者から高齢者まで全世代に広がる。
と聞いてあなたは信じますか? 信じたくはないが、私はこれを実感します。次女がコロナ禍に翻弄される様子を見ているからです。
平成一桁生まれの我が子3人の就職を通して、私は「就職氷河期」と呼ばれる世代の就職活動を見てきました。2020年、京都大の大学院生だった私の末娘は、緊急事態宣言下で就活。2月インターンシップで好感触だった第1志望の企業から、5月「今年の採用は中止」と連絡を受けました。コロナ禍が新卒労働市場を直撃したのです。まさにこの記事(参考①)通りでした。
40年前バブルの絶頂期に、私は新卒で高校教諭として就職しました。当時は、長崎の一般企業に就職した短大卒女子が「ボーナス100万もらった」と当たり前のように話す、景気がいい時代でした。5、6年して、私が20代後半にかかる頃バブルが崩壊。その後の30数年は本書(概要)の通りです。
コロナ禍、気候変動、戦争、円安、スタグフレーション懸念、これらに伴う貧困。今の子供たちは、親世代が経験したことのない、もっと複雑な時代を生きることになる。その前提で私は教育をデザインしなければ、と考えます。
本気で「生きる力」の育成です。
- 保護者さまからみて、お子さんはどんな方面に適性がありますか?
どんなことが好きで一生懸命になれますか?お子さん自身はどうおっしゃっていますか?
- なぜ勉強するのでしょう?
少なくとも、普通に生きて十分稼いで家族と楽しく暮らすため、ではありませんか?自分の適性や好きを活かして、無理なく頑張って生きていけるように勉強しています。
- 上級学校への進学に何を期待しますか?
私は「新たな出会い」だと考えます。自分を感動させる新たな出来事、先生や先輩、周囲の人々との新たな出会いを期待します。
出会いを信じて勉強する。その価値は十分あります。 - 好きを仕事としている人は学びを究めます。
学校のような勉強でなくとも、必要なことを習得する訓練は不可欠です。
- なぜ今さら、「適性・好き・得意」か?
総務省統計によると「専門的・技術的職業従事者」の伸び率が職業大分類の中で最も高いからです。詳細はこの記事(参考①)をお読みください。
お子さんが勉強に目的や意味を感じながら取り組んでいるのであれば、最高に幸せです。
保護者さまは、聞くに徹する相談相手になってください。お子さんが気づくしかないからです。毎日の勉強に目的を感じられたら、親から子への最高のプレゼントです。
お子さんの教育に関する保護者さまの悩みは私がお聞きします。遠慮なくご相談ください。
私にできることは、
勉強で「やり抜く経験」をさせること
- 学習の難易度はお子さんに適切なレベルでなければいけません。
- 学習目標は細かく分かれた方が達成しやすいです。
ずっと先の目標に向けて勉強を進めるには、目標達成の意味の理解と同時に「やり抜く力」が必要です。「やり抜いた経験」のみが「やり抜く力」を強化します。
塾が、英語検定や数学検定へシフトしているのも目標は「合格」と明確だからです。
難しすぎてはいけません。子どもたちが自分の力に応じたレベル(級)を設定しチャレンジします。受検までにatama+や過去問で徹底的に反復演習します。
不合格者も、合格を目指すのなら不合格の原因を振り返って対処し、合格するまでやり抜かなければなりません。気づかせるしかないのです。
やり抜けば「自信」が芽生えます。自信とは間違いなくやれるという自己評価。自信が「やり抜く力」を強化します。こんな循環を塾の子供たちに定着させたいのです。
進路選択や大学受験はこの延長にあります。
生きる力、とは
「デフレの正体」の中で藻谷浩介さんは「生きる力」を「普通に生きて十分に稼いで楽しく家族と暮らしながら人とコミュニケートし力づけ、社会にも貢献していく力」と表現しました。
身の丈にあった爽やかなこの表現が、私は好きです。塾で関わるすべての子供たちに「生きる力」を身につけてほしいです。子供たちのやり抜こうとする気持ちを信じて、やり抜く経験を積ませようと考えます。
「アンダークラス2030」概要
- バブル期、「フリーター」と呼ばれる非正規労働者の人たちがいた。
- バブル崩壊後、新規学卒者の求人は急速に縮小。1990年183万人だったフリーターは2003年417万に倍増。
- 「就職氷河期世代」の出現した。(参考③)
- つかの間の売り手市場
- 2020年、コロナ禍で新卒採用が縮小。就職氷河期再来。
- 2030年、フリーターが65歳に。
中期氷河期世代から、学校を出たばかりの若者たちの2割から3割がアンダークラスになるのが当たり前になった。
2010年代後半から2020年までの数年間は、団塊世代の完全引退や、就職氷河期に採用が少なかったことによる人手不足があり、新卒者の就職は好調だった。
新型コロナウイルス感染症の流行で、若者たちが卒業とともに安定した職を得られる時代は終わったと考えるべきだろう。
非正規労働者として生涯を送ることが珍しくなくない世代が現役世代全体を覆う。
参考
売り手市場から一転。コロナ禍が新卒労働市場を直撃。「新・就職氷河期」を作るな。(参考①)
太田聡一(慶應義塾大学経済学部教授) エコノミスト20210525コロナ禍で企業が採用中止したり採用人数を絞り込んだ。会社説明会の中止・延期、オンラインでの面接実施と、手探りのマッチングを余儀なくされた。
バブル崩壊後から2000年代前半までの不況期に、新卒時点で就職が決まらない「新卒無業」や「フリーター」と呼ばれる若年非正社員が急増し「就職氷河期」世代と呼ばれた。企業が既存従業員の雇用を維持し、賃金コスト抑制のため新卒正社員の採用を大幅に抑制した結果だった。
問題は、彼らがその状況から抜け出せずに無業・フリーター期間が長期化したことだ。無業やフリーターはスキル形成の訓練機会が乏しい。企業がそうした人たちを「新卒時に採用されなかった人材」と評価し正社員としない傾向があった。
就職氷河期世代で正社員になった人にも、不本意就職から来る離職が増えた。転職を繰り返す人も出てきた。彼らの就職先は中小企業が多い。無業やフリーターの経験があったり、転職を繰り返してきた人は、勤続年数が短いため賃金が安い。
社内で長期にわたって人材育成する企業は、訓練可能性の高い労働者を採用する。仕事経験がない優秀な新卒者は、企業にとって最も訓練しがいがある労働者タイプだ。そうした新卒者を確保することが企業にとって重大な関心事だ。中途採用では、社内で得にくいスキルを持った人材を少人数採用する。フリーターや転職を繰り返す人は採用のチャンスは小さい。
総務省統計によると「専門的・技術的職業従事者」の伸び率が職業大分類の中で最も高い。この分類に属する職業は、スキルの中で社内の人材育成が必須となる部分が大きくないため、外部人材を登用しやすい。若年雇用対策として、再チャレンジを目指す若者が、こうした伸びつつある分野に進むことができるように教育訓練を充実させ職業紹介を強化することが重要である。
アンダークラス(参考②)
資本主義社会には4つの階級がある。資本家階級、労働者階級、その間の新中間階級、自営業者層と農民層旧からなる旧中間階級だ。「アンダークラス」は労働者階級と異質な、一つ下の下層階層だ。従来の4階級から5階級構造へと転換した。
「氷河期世代」の出現(参考③)
第2次ベビーブーム世代が数年後に大学受験を迎える1984年、大学定員を増やす方針を文部省が打ち出した。大学進学率は、ベビーブーム世代が通過した以降の1994年あたりから急上昇し2005年には51.5%に達した。大卒者が増え、大学生の就職が難しくなった。
第2次ベビーブーム世代が就職する頃、日本はバブル景気の末期を迎えていた。人材需要が拡大し就職は容易だった。しかしバブル崩壊後、求人は大幅に減少した上に大卒者が多かったため、就職状況は急速に悪化した。こうして大量の若者がフリーター、無業者となって就職氷河期が始まった。日本経済はバブル崩壊に続く不良債権による経営破綻の続出で大混乱に陥っていた。
保護者さまは氷河期世代
-
年齢は2021年時
- 戦後世代 平均年齢67.2歳
- ポスト戦後世代 平均年齢48.4歳
- 氷河期世代
・前期 氷河期世代 平均年齢39.9歳、最長者46歳
・中期 氷河期世代 平均年齢34.9歳、最長者41歳
・後期 氷河期世代 平均年齢30.3歳、最長者35歳 - ポスト氷河期世代 平均年齢24.5歳、最長者32歳