「眠育」、小中で広がる
就寝時間を記録し生活指導小中学生に睡眠時間を記録させるなどして不規則な生活の問題点を考える「眠育(みんいく)」が広がっている。スマートフォン(スマホ)に夢中になり夜更かしする子供が増える中、睡眠が大切な理由を具体的に教え、自主的に生活を改善させるのが狙いだ。不登校の児童生徒が減る学校もあり、成果が出始めている。
「これから午睡タイムを始めます。カーテンを閉めて電気を消しましょう」。茨城県石岡市立小桜小学校は週2日、午後0時55分に全校生徒96人が一斉に机にうつぶせになり、昼寝をする。 同校が昼休みに15分間午睡タイムを設けたのは2015年9月。児童からは「掃除や午後の授業がすっきりとした気持ちで受けられる」と好評だ。教師も「児童の集中力が増した」と効果を実感しているという。
同校は規則的な生活習慣を身につけるため、テレビゲームやスマホの使用を控える「アウトメディアチャレンジ」も実践。勉強中はテレビを見ない▽午後9時を過ぎたらテレビ、ゲーム、スマホをやめる▽テレビ、ゲーム、スマホは1日2時間まで――など4コースを設け、児童はコースと実施日数を決め、毎月第3週に取り組んでいる。
保護者へのアンケートによると、導入直後は午後10時台に寝ていた児童が全体の4割を超えていたが今年度は3割台に低下。子供の生活習慣が良くなったと思う保護者は9割を超えた。同校の山口広美教頭は「来年度以降も取り組みを続け、よりよい睡眠と生活習慣の向上につなげたい」と話す。
「フィンランドでは午前0時に子供を寝かしていないと親が虐待を疑われます」。堺市立三原台中学校は昨年11月、眠育の公開授業を実施。木田哲生教諭(33)が視察したフィンランドの事情を話すと約560人の生徒が真剣に聞き入った。
続いて2年生のグループが15年度から始めた眠育授業の成果を発表。平均睡眠時間が7~8時間の子供は同5~6時間の子供に比べ、脳の「海馬」という記憶に深く関わる部分が1割大きくなることを学んだといい「十分な睡眠を取れば賢くなれる」と訴えた。
同校は各学期に2回、全生徒に2週間、就寝・起床時間の記録を付けさせる。生徒は自分の睡眠時間に問題がないかを点検。生活に乱れが目立つ生徒は保護者を含め面談し、夜更かしの主原因のスマホやテレビを見るルールを決める。
「寝だめしても睡眠不足解消の効果は小さい」など睡眠の情報をまとめた教材も作った。2年生の片田環さん(14)は「寝る前にスマホを触らなくなり、翌朝すっきり起きられるようになった」と笑う。
同校では15年度、欠席が目立っていた生徒49人のうち16人の欠席日数が減ったという。 子供の睡眠を研究する小児科医の三池輝久熊本大名誉教授(74)は「睡眠不足で体内時計が乱れると脳の働きが悪くなる。意欲低下や不安感を招き、不登校にもつながる」と指摘している。
(竹下より)
※海馬の説明は【なぜ繰り返すのか】脳科学からみた勉強法その1をご覧ください。