2018年7月2日月曜日

勉強する目的、適性、両立、興味関心。すぐに役立つものほどすぐに役に立たたなくなる。| 「好きなようにしてください たった一つの「仕事」の原則」

一橋大大学院 国際企業戦略研究科教授 楠木健さん著書「好きなようにしてください たった一つの「仕事」の原則」から。

「勉強する目的」「適性、興味関心」「学習と部活の両立」「成長」に関するアドバイスに使える部分を紹介します。

中高生の進路選択に参考となります。文意を損なわないように書き出しているつもりですが、興味がある方はぜひお読みになってください。

「勉強する目的」

#mokuteki

究極的には一つだけだと僕は考えています。「自分の頭で考え、自分の意見を持ち、それを自分の言葉で表現する」、これに尽きる。「自分なりの価値基準をもって生きられるようになる」といってもよい。もっとあっさり言えば「教養」です。
いい時も悪い時もぶれない「知的体幹の強さ」。それはやはり広い意味での教養がもたらすものです。

大学とはそもそも実務研修する場ではなく、みずからの価値基準をしっかりと定める機会と場所を提供するものです。「すぐには役にたたないけれど、若いうちの一定期間、人間生活の基盤形成に集中して取り組んでみるのもいいんじゃないの・・・」という人間の知恵が長い歴史の中で積み重なって、結集したのが大学という制度です。(P127)

「適性・興味関心」

#tekisei

時間とかお金とか努力などを投入した「瞬間に返ってくるもの」=すぐに役立つものほどすぐに役に立たたなくなるのです。これは仕事と仕事生活の鉄則です。(P129)

やり続けていてもどうしてもアウトプットがでない、もしくは、アウトプットがでても客が評価する成果にならない。これを「向いていない」という。つまり資質、能力がない。これはどうしようもない。

向いていないことが判然としたら、さっさと別のことをやるべき。だからといってゼロからやり直したり大転換をする必要なし。本当に向いていない方面には、そもそも手をつけない。

仕事のやりがいは、自分の納得を追求する過程にある。客にとっては結果がすべて。仕事の成果を自分で評価してはならない。自分の中で積み重なるのは過程がすべて。仕事の過程で客におもねってはならない

客側で記録に残る成果の集積を「仕事の量」という。これに対して、客の記憶に残る成果が「仕事の質」。一方で、自分の記憶に残る成果、これを「自己満足」という。

仕事の量を左右するもの、これを「誘因」(インセンティブ)という。ただし誘因では仕事の質を高められない。仕事の質を左右するのは「動因」(ドライバー)。誘因がなくても自分の中から湧き上がってくるもの、それが動因。(P158-160)

「学習と部活の両立」

#ryoritu

人生はトレードオフだ。

トレードオフの本質は「何をやらないか」
時間や体力やお金など資源制約がある以上、「何かを得る」「何かをする」ということは同時に「何かを手離す」「何かをしない」と表裏一体です。なにかをするということは何かをしないということと同義なのです。これをトレードオフといいます。

資源制約がなければ、トレードオフも存在しません。資源の制約がない状態では、意思決定はそもそも不要です。全部、思いっきりやればいいだけです。

トレードオフの本質からして「何をするのか」よりも「何をしないのか」の判断がよっぽど大切です。前者に比べて後者のほうがずっとタフな意思決定です。その時点で何かを失うことになるのですから。しかしトレードオフがある以上「何をやらないことにするのか」の決定なしには実際には何もできないことになります。

1日24時間しか持ち合わせていないのです。(イーロン・マスクさんや孫正義さん)こういう方々は「何をしないか」というトレードオフの選択において尋常一様ならざるクリアな基準の原則を持って生きているのではないかと推察します。
制約の存在こそが人間の幸せの基盤になっている。だから心の声を聴いてどれかを捨てるしかない。

「成長」

#seityo

成長というのはいまと違う「優れた人間」になることだとは僕には思えません。自分がもともと持っている、しかしまだ埋もれている何かを徐々に自分の中から引き出してくるプロセスだと考えた方がしっかりきます。
もっと言えば、自分は自分が勝手に期待するほど「優れた人間」ではないという元も子もない事実を素直に受け入れていくプロセス、これが成長の正体ではないかという気がしています。

自分の仕事に正面から向き合う。それは自分を向くということではありません。自分が役に立とうとする他者を向くということです。自分以外の誰かのためになってこその仕事。自分のために自分を向いてやるのは趣味。趣味は家でやりましょう。