2018年4月1日日曜日

加津佐中から青雲高へ。 Sくん 2018.4東京大進学。子育てに思う

銀杏は東大のトレードマークです。

2018年3月、Sくんから東大理Ⅱ合格の知らせが入りました。高校受験を竹下数塾で学び青雲高校へ進学。寮生だったSくんは長期休暇中塾で学びました。

加津佐中→青雲高→東大と進んだSくん。彼の中3時代が参考になりますよ。後半には保護者さま向けに、竹下が子育てに思うことを書いています。いずれも長文ですが、読んで私の思いを感じていただければ幸いです。

【東大合格をふり返って】

竹下は25年務めた県立高校教諭を2008年3月に48歳で退職、雲仙市南串山で家業に従事しながら実家の2階で竹下数塾を開業しました。

2013年、諫早市久山台と42キロ離れた南串山町、中間の千々石町に教室をもち、週に久山台3回、南串山と千々石は1回ずつ1人で指導していました。

10時間なんて誰がやるんだ!

高校受験。8月

Sくんと私は同郷です。実家からさらに10キロほど離れた加津佐町の生徒さん。中3夏休みに「青雲高を受験したい」と入塾。初めて訪れた日、前年不合格の先輩から譲り受けた真っさらな青雲高校過去問集を持っていました。

南串山教室 マスマッスル学習会 2人。寂しいですね。

先取り終了、過去問を解く。

学んでいない単元は入試問題が解けません。2013年当時は、中3数学を参考書で予習させ、毎週1回2時間で1単元ずつ進みながら、2学期前終了を目標に先取り予習していました。加津佐中トップのSくんでも、8月入塾ではきつかったことでしょう。謙虚に取り組み、千々石教室にも通うようになりました。

加津佐から千々石教室まで片道30キロ。2往復1日120キロ。送迎のお母さまはたいへんです。でも週2回通い週2単元ずつ学習するので中3数学がどんどん進みます。予習を終え青雲の過去問を1巡すると、Sくんは、合格には何が必要か目標を把握します。学習への取り組みが一気に加速しました。

50キロ以上離れた久山台教室の夏マッスル学習会にも参加したSくん。感想を次の様に書いています。

10時間半なんていったい誰がやるんだろうと思っていた。
実際みんなやっていた。
自分はさらに努力しなければいけない。(2013年9月)

2013年夏マッスルの時間割。久山台教室の様子。火 千々石、木 南串山、水金土 久山台で指導していた。

2013年6月25日FB投稿
【夏休みマスマッスル7時間!苦手を克服する】得点するためにどれくらい学習が必要か。それはやった人しかわからない。克服するまでやるかどうか。夏マッスルは苦手克服の夏にする学習会です。

心が、定まる。

1巡。合格を意識

10月後半。「Sくん合格するぞ」と私も意識しました。青雲の過去問2巡めをB5コピー用紙に1問ずつ印刷して解かせました。「1問解いたら次」とペースはどんどん上がっています。しかし解くのは数学だけ。他教科も進めたく2学期後半には久山台教室にも通いだしました。南串山、千々石で学んだあと、明日は休みという日は久山台教室の学習会に参加します。

2013年11月当時の久山台教室マスマッスル学習会

2013年11月30日FB投稿
【集中できる部屋づくり】受験生の学習をバックアップするために机を増強しています。現在和室に5台入れていてこれが予想以上に好評。東京では「塾に畳」が流行っているそうです。私が小さい頃は勉強机が縁側(えんがわ)の端っこだったり、床の間だったりしていました。こどもたちはきっとたたみ一畳のスペースでいいのです。スッキリした自分の空間があったら集中すると思いますよ。

受験直前。冬休み学習会

12/26は久山台教室、12/27は南串山教室

冬休みは久山台・南串山・千々石教室の学習会全日程に参加。塾で一番勉強したのは、片道50キロ以上を通ったSくんでした。

Sくん英語と理科に9時間。
12/26久山台マスマッスル参加時の学習メニュー
英語問題集p28-p58、理科問題集p24-p34、青雲24年入試理科・英語

12月26日FB投稿
【マスマッスルの目的】は「やればできる」の経験を強化し「自宅でできる」生徒の育成をすること。昨日は60分毎に5分間の休みを入れました。しかし生徒たちは休みません。14時に始めて17時の食事休憩(20分)まで小中高生14名が静かに学習しました。
以下中3の学習例です。やっていることはみんなバラバラ。共通しているのは【なめらかに解けるまで繰り返す】。ガンバレ受験生!

12月26日 久山台教室 中央 ミドリ色のダウンがSくん。当時は小学生の現高3の姿も見える。

12月27日 今日は南串山教室 手前左。ミドリ色のダウンがSくん

マッスル追加!

受験は1月9日木曜日。彼の学習量を確保するために、9時間のマスマッスル学習会を1/6日久山台、1/7千々石と追加した。

1月9日受験。「大当たり!」

1/10青雲の問題がラサール高といっしょ。
こんなことがあるのですね。笑

2014年1月10日FB投稿
【大当たり!】新春から縁起がいい!最高水準問題集から受験対策にセレクトしていた問題が昨日の入試で出題。よく似ています。一部の中学生に取り組ませている最高水準問題集。指導の方向性として間違いなしですね。
塾では持たせた問題集からさらに問題をセレクト、「宿題演習→確認テスト→解説」をくりかえすというサイクルを構築中。セレクト以外の問題も同じサイクルで各自が取り組めたらいいなと思っています。

誤解なきよう付け加えると、私は入試問題を当てようなどと考えていません。難関人気大の入試では類似問題などあり得ないからです。
考えさせたいテーマを、「ちょっと背伸びすると解けそうな学力」がついた時点で取り組ませる。「やったー」とか「あ、そーか」「なーんだ」「なるほど!」とつい口走ってしまう、面白い!って感じられたら理想ですね。

すべては合格から始まった。

「やっと探し求めた塾に出会いました」
8月、Sくんが入塾時に、お母さまからいただいたおことばです。すべてはここから始まりました。

しかし、青雲高合格から、さらに大きな展開が始まりました。

2014年1月13日FB投稿
やった!南串山教室から加津佐中3Sくん青雲高合格!8月入塾。9月中3の教科書終了、過去問開始。4時間半かけても1回分の試験が解けません。悶々とした日々が続きました。説教くさいことも言いました。
あるとき、心が定まったような変化を感じました。「あとは1/9(木)に間に合うかどうかだ」 冬休みは14時から23時まで1日9時間のマスマッスルを全日程消化。9(木)入試終了後も南串山教室で22時半まで数学を指導しました。
おめでとう!さあまた勉強。青雲で通用する学力をつけるために。

青雲進学→浪人→東大再受験→合格。

青雲高合格後も夏冬の長期休暇中には塾の学習会に毎年参加したSくん。
高3夏、初見で東大過去問を次々解いたので驚きました。

しかし現役でのセンター試験は今一つ力及ばず。東大足切りはクリアしたものの不合格。東京の予備校に行きました。

2017年12月、塾の現役高3Yさんも東大を受験予定だったので、私は初冬の東大に「願掛け」に行きました。

塾生たちに、東大の銀杏で作った「学業成就」の御守り。

入学式と塾で撮影していた写真をアルバムにしてプレゼントした。

久山台教室 マスマッスル学習会の様子。

東京大理Ⅱ合格。

1年半ぶりに成長した彼に会いました。予備校の東大コースはいくつかのグレードに分かれ、合格は彼のクラスからは数名しか期待できない。しかしS君は解答速報で合格を確信したそうです。

【保護者さまへ】子育てに思う

Sくんは、このご両親だから頑張れた。

東大。銀杏並木と同じ場所で。ご両親とSくん

Sくんのお母さまは「竹下先生は受験の神様」と言います。しかし、ご家族に同行して「このご両親だからSくんも頑張れたんだな」とつくづく感じました。

東大赤門の通りを私とお母さま、後ろにSくんとお父さまが並んで歩きながら、Sくんとお父さまの会話がとても自然。息子はこうも父親と話せるものだろうかと思うぐらいに自然なのです。

ご両親からの愛をたくさん受けてSくんは頑張れたんだな、と感じました。

入学式 武道館にて

高3はロケットの発射台

私も青雲出身です。(2021年)60歳、同級生には三十数名の医者がいます。雲仙市と平戸市の市長も同級生。同級生たちが様々な分野で現役で活躍しています。その分岐点は40年前、高校生のときの進路選択でした。

中高校生は自分の人生の方向を決める分岐点にいます。高3はまるでロケットの発射台というと、大げさですか?

AI(人口知能)は18世紀から19世紀の産業革命以上のインパクトを与えるそうです。10代の皆さんは、10年後20年後、今は存在しない職業に就きます。私が二十歳からの40年間を振り返っても、大学卒業当時なかった仕事がたくさんあります。

今はない仕事に就くのだから、将来○○になる!なんてあまり考えず、自分の興味関心を追っかけて、極めた方がいい仕事に出会う可能性が高くなると私は考えます。

当塾でatama+で学んでいる人は知っているでしょう。AIは君の実力を把握しているし、(どんな方かは知りませんが)解説する先生の説明は簡潔でわかりやすい。AIの教育現場への導入が進めば、先生たちの仕事だって大きく変わります。

コンピュータになくて人間にあるのは「モチベーション」。

落合陽一氏は「これからの世界をつくる仲間たちへ」で次のように言っています。

コンピュータには「これがやりたい」という動機がありません。目的を与えれば人間には太刀打ちできないスピードと精度でそれを処理しますが、それは「やりたくてやっている」わけではない。

いまのところ、人間社会をどうしたいか、何を実現したいかといったようなモチベーションは常に人間の側にある。だからそれさえしっかり持ち実装する手法があれば、今はコンピュータを「使う」側にいられるのです。

逆に言えば、何かに対する強いモチベーションのない人間は、コンピュータに「使われる」側にしか立てません。(p38,39)

家庭や学校塾で「モチベーション(動機付けや目的意識)を育てる」、「適性(得意なこと似合っていること)を見極めること」が大切だと思いませんか。つまり、子どもたちが自分自身を振り返ることが大切だと思いませんか?

一生自分を支えてくれる心、を育てる。

「失敗しても大丈夫」受けとめてくれる安心。

子どもたちに「失敗しても周囲はわたしを受けとめてくれる」とメッセージを送り続けましょう。やってみようと思う心、興味関心を持つ心、あきらめず続ける心は、どんなことがあっても大丈夫だよという前提があって育ちます。

「Learn Better」アーリック・ボーザーより。

ミスは正しく学んでいないことの証明、失敗はやっていることが間違っているしるしだ。

私たちは失敗すると、意味を探し始める。だから学びの効果がいっそう高くなる。

知識の習得にミスは欠かせない。解決のてがかりすらつかめない失敗はつきものだ。「失敗に対してとてつもなく寛容でなければやっていけません」と彼は言った。「95%は手探りの状態なんですから」

間違いは思考の本質である。間違いは概念形成の核心だ。学び、専門知識を育てる際に間違いを犯すのは、それが理解するために必要だからだ。

ミスにわずらわされず、成長に目を向けよう。失敗や間違いはスキルや知識を獲得するチャンスととらえよう、と自分に語りかけるのだ。

例えばミスをした後、自分に「ここから何が学べる?どうすれば成長できる?」と問いかけるとよい。

ミスや苦労をしても「これが普通だ」と思えばよい。

一生を支えてくれる物事への心構えや動機付けは10代までに育ちます。

難しくはありません。保護者さまが幼稚園や小学校の運動会で子どもの演技を応援していたときと同じ気持ちで子どもたちを支えること。 子供たちが、上手くいってともに喜び、失敗しても「よしよし」とまるごと受け止め、いつも子供たちに笑顔を送る。親は子供にとって一番の応援団長であってほしい。

私も保護者さまご家族の応援団に加わります。そのうえでやるべきことはきっちりやらせる。勉強面はわたしが引き受けます。

適性を見極める

周囲の大人は、子どもたちの得意・不得意、興味・関心を見極めて、得意を伸ばせるように応援することが大切です。

わたくし竹下は「趣味を仕事としているよ」と塾の子どもたちに伝えています。未知への好奇心、創造する力が原動力と感じています。これは小学校時代の読書によって育まれたと自己分析しています。

私より入試問題を解ける人はいくらでもいます。でも数学をわかりやすくかみ砕いて、根本にさかのぼって説明することに関して私は考え抜いて築いた「指導観」がありその指導法に自負があります。

そして「指導観」×「読書」×「コンピュータ」×「こどもたちを幸せにしたい」×「モチベーション」×・・・・と私が一生けん命になれることをかけ算してそれを生業(なりわい)にしました。

「竹下の仕事は天職だね」と友人が言ってくれます。私はただ、面白いと思うことを仕事に活かそうとしているだけです。

私は苦手なことはまるっきりダメ。とても頑張れません。だからこどもたちの適性を見ようとします。

適性を見極めアドバイスするのは、保護者さまやおじいちゃんおばあちゃんを含めたまわりの大人の役目です。

落合陽一氏は「10年後の仕事図鑑」

「趣味を仕事でやれ」と言われると、少し難しく聞こえてしまうかもしれない。考え方をシフトして、「仕事になる趣味」を探してみたらどうだろうか?(p232)とアドバイスします。それには、得意不得意興味関心を子どもにも意識させておく必要がありますね。

就職活動した次女から、入社試験の適性検査をAIで行っていると聞きました。そんな時代なのです。適性を中学高校から自分についてよく考え、自分を活かす選択を行うことが大切だと思います。

東大進学のSくんが中3のとき、「あるとき、心が定まったような変化を感じました」と書きました。 子どもたちは自分が進むべき道に気づいたとき、何も言わずとも前に進みます。誰が何と言おうともこの道を進む。それは「出会い」だからです。

私の塾にはそんな出会いに突き動かされて勉強している子たちがいます。

2018/6/23追伸
この記事を読まれたSくんのお母さまからいただいたメールです。

昨夜も、フェイスブックを見せていただいて、ずーっと可愛いがっていただいたなあと思ったところでした。
実際、せっせと塾に通ったのは8ヶ月しかなかったわけですが、濃密な指導をしていただいたなあ、あの時期に青雲でついていける力を作っていただいたんだなあと改めて思いました。
竹下先生に巡り会えて、
全てがいい方向に向いました。
一期一会って言葉は、真実でした。

塾で勉強する子どもたち、保護者さまみなさんに同じ思いを持っていただけるよう、前に進んで参ります。<終わり>