45年8月15日に戦争が終わり、野村さんは何を思ったのか。そう聞くと「金持ちになりたい、その思いだけだった」と言い、こう続けた。「(中学の時)僕より年下の美空ひばりさんが電撃的にデビューした。『僕も歌手になろう』と音楽部に入りましたが、うまく歌えない。高い音域で声を出せないんです」
歌手や俳優といった華やかな職業を夢見たこともあったが、あきらめた。そして、中学2年で野球部に入ると、あれよあれよという間に才能が開花した。同書にはこうある。
<野球は遊びでかじった程度だったが、簡単に大きな当たりを打てるのだ。周りの部員は「おまえ、うまいな」と感心していたが、むしろ、なぜ他のやつらはこんな簡単なことができないのか不思議でならなかったくらいだ。私はすぐに「四番・捕手」として試合に出られるようになった>