2025年10月30日木曜日

高見優花さん早稲田大学文学部 志望理由書

早稲田大学文学部 志望理由書(最終稿)

私は、新しい視点を取り入れることができる環境下でドイツを学びたいと考え、早稲田大学文学部を志望した。 中学1年の頃に読んだヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」が、私がドイツに興味を持つきっかけとなった。 日本との違いが見受けられ、異質に感じたのだ。

この物語のテーマであるクジャクヤママユは、日本人が嫌う蛾である。そもそも本文中に「子供の時に蝶集めが当たり前である」という描写があるが、 私の周りに蝶を採集している人はいなかった。小学生の頃は、緑色の虫かごにカマキリやクワガタ、カブトムシを入れて世話をするのが普通であった。 今読み返してみると、文章が淡々としており、寒冷な気候の国の文体の特徴のようにも感じられた。

一年後、日丸屋秀和氏による国を擬人化した漫画「ヘタリア」を読み、ドイツへの関心がさらに深まった。 登場するプロイセンという国が、現在のドイツの基礎を作った存在であることを知り、戦後の東ドイツの歴史的背景にも関心を抱いた。

私は地元の図書館で河合信晴氏の『物語 東ドイツの歴史』を読み、当時の東ドイツが監視社会でありながらも 一時的に文化政策の自由化が進められていたことを知った。また、厳しい体制下でも郷愁を感じる「オスタルギー」という概念が存在することに驚いた。 この過程で、ドイツ理解には文学・文化の両面からの探究が必要だと痛感した。

早稲田大学文学部には、ドイツの近現代文学や比較文学を専門とする教授が在籍し、豊富な研究図書が揃う環境がある。 ここで体系的に学び、自らの関心を研究へと昇華させたい。

探究テーマ:「ドイツの移民政策による生活の変化」

坂口裕彦氏の『ルポ難民追跡―バルカンルートを行く』を読んだことが、移民問題への関心の出発点となった。 ドイツが第二次大戦の反省を踏まえ、難民に庇護権を与える政策を取ってきた一方で、 テロや犯罪の増加により国内では反発も強まった。私は「人道主義」と「社会の安定」という二つの価値の間で揺れる現実に強く惹かれた。

当初は移民受け入れに否定的であったが、警察白書や国際報告を調べる中で「移民犯罪は増えていない」という事実を知り、 自らの偏見に気づいた。インターネット上で拡散される過激な映像が恐怖を誇張している現状にも疑問を持った。 偏見を乗り越えるために、文化や宗教、風土に根ざした「人間の行動原理」を文学から読み解きたい。

早稲田で実践したい三つの学び
  1. 比較文学の研究: 異なる地域の文学を比較し、思考や文化の分岐点を探る。 近年の作品には移民や共生のテーマが多く、それらを分析することで人間の普遍的構造を明らかにしたい。
  2. フィールドワーク: ドイツの共生社会の縮図として、新宿区・新大久保での現地調査を計画している。 留学生や地域住民へのインタビューを通じて、異文化間の協働や摩擦の実態を探る。 戸山キャンパスが近いため、継続的な実践が可能だと考える。
  3. 多角的な視点の獲得: 学校探究で日本建築の「懸造り」を研究した経験から、興味外の分野にも積極的に触れる重要性を学んだ。 ブリッジ制度や全学副専攻を活用し、心理学・人類学など隣接分野を横断的に学びたい。

こうした学びを通じて、文学を“他者理解の手段”として探究し、人間の思考の根源に迫りたい。 留学生を含む多様な学生との協働を通じ、互いの価値観を交わし合う場として早稲田を選んだ。

以上の理由から、私は早稲田大学文学部を志望する。文学を通して他者と向き合い、協働の中から新しい理解を築いていきたい。