
※ この本は塾にあります。お貸しします。
「変えようとしない」ことで変わった親子関係
私は、中高生の頃の息子を勉強させようと一生懸命でした。
しかし思うようにいかない。お互いに苛立ち、すれ違っていました。
妻は、以前の私を「怒ってばかりだった」と言います。
そんなとき出会ったのが、スティーブン・R・コヴィー著『7つの習慣』の一節です。
- (引用)
- 私は息子を変えようとせず、彼自身の本質、独自性、一人の人間として彼本来の価値を感じ取ろうと努力してきた。
この言葉に、私は深く反省しました。
息子は一浪して関東の私立大学に進学しました。遠く離れたことは、息子をあるがままに受け入れるきっかけになりました。
- 彼自身の内面の安定
- 他の子と比較しない。
- 息子本来の価値を大切にする。
この3つを気がけるようにしたのです。
「見守る」に徹しようとしたことは、私自身にも変化をもたらしました。
「見守る」が育んだ自立
- (引用)
- 息子が自分で独自性を表現できるように、邪魔にならないようにしようと私たちはそう決心した。息子を肯定し、彼の価値を認め、成長を喜ぶことが、親の自然な役割なのだ。
- さらに自分たちの子供が「良い子」であることに満足感を得ようとする態度を改め、自分自身の内面的な安定を育てる努力をした。
- 他の子と比較して優劣を判断したりせず、彼本来の価値を大切にするようになると、私たち夫婦も息子と過ごす時間を心から楽しめるようになったのだ。
- 守ってもらうことに慣れていた息子は初め、親の庇護が突然なくなり禁断症状を起こした。私と妻は息子の苛立ちを理解したが、必ずしもそれに応えようとはしなかった。
- 「おまえは一人でも十分にやっていける」という息子への無言のメッセージだった。
- 数週間、数ヶ月と月日が経つにつれ、息子はひそかに自信を持ち始め、自分を認めるようになった。自分のペースで花を咲かせ始めた。学業成績、スポーツ、人間関係など社会的基準からもしても目を見張るほど成長した。
- 息子が「社会的に得た高い評価」は周囲の期待に応えようとしたからではなく、本来の自分を素直に評価したからに他ならない。
変えられるのは自分だけ
この経験を通して私が学んだのは、「変えられるのは自分だけ」というシンプルで深い真理です。
大学に進学後の彼を“友人”と見立て『友人だったらどのように接するか』と自問し、彼の考えに立ち入らないようにしました。すると幼少の頃、彼に感じていた、"細かいところによく気づく"長所がふたたび感じられるようになったのです。
もしかしたら、その変化に気づけるだけの余裕が、私自身の中で生まれたのかもしれません。
『7つの習慣』でいう「インサイド・アウト」──自分の内面を変えることで外の世界との関係性も変わっていく──は、──「私が変われば、子も変わる」──という実感をともなった、私の揺るぎない信念となりました。
納得する、やり抜く。
この「インサイド・アウト」の姿勢を、塾の指導にも活かそうと、私は試行錯誤しています。
生徒たちに身につけてほしいのは、次の2つです。
- 納得する体験
- やり抜く習慣
この2つを支えるために、小中学生はatama+からeboardに教材を切り替えしました。より基本に忠実で、納得しやすく、やり抜きやすい教材だと感じたからです。
私は子どもたちにこう伝えます。
「勉強を作業にするな」
「やればいいんでしょ!」という気持ちで勉強していては、将来、自分の力を発揮できる場面が限られてしまいます。
理解力は教えられて身につくものではありません。
「なるほど!」と納得した体験の数だけ、物事をやり抜く力は強まります。それはやり抜く習慣の土台を築きます。
子どもの中から変化が生まれるように
『7つの習慣』の一節に触れたとき、私は「これはまさに、私たち大人がどうあるべきかへの答えだ」と感じました。
お子さんの今の様子に対し、自分は何ができるか、お子さんの役に立っているか私は自問します。
長女・長男・次女、それぞれの小さな「好き」や「得意」を大切にしました。それが、彼らの「生きる力」となったと確信しています。
子どもたちは、自分の内側から変わっていきます。その変化のきっかけとなるのは、小さな「好き」や「得意」を、大人が焦らず見守る姿勢ではないでしょうか。そして、そのように見守るためには、私たち大人がまず、自分自身の在り方を見つめ直す必要があります。
「変えられるのは自分だけ」。
だからこそ、私たち大人が自分を見つめ直し、変わろうとする姿こそが、子どもたちの内なる変化のきっかけになるのだと思います。